「大発見」の思考法 iPS細胞vs素粒子
ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんと益川敏英さんによる対談形式での本となっています。その分野を極めた二人ならではの価値観を垣間見れる非常に面白い本でした。
お二人の印象
この本を読んで、益川さんは言いたいことをストレートに伝える方だなと感じましたし、数学がえらくできる方らしい(ノーベル賞を受賞されているのでそれは当然だといえますが・・・)というのも分かりました。
また、山中さんは現在は直接研究するというよりは研究のプロジェクトをまとめる、いわば経営的な仕事をされているらしいです。非常に忙しいだろうなという感じが本から伝わってきました。
感想
この本で特に印象に残ったのは山中さんの行動力です。留学をする際も片っ端から手紙を送ったり、面接の中で本当はできないことをできると断言したり(笑)、決断力のない私にはとてもできそうにないなぁと思うことをしていたみたいです。また、アメリカ留学から帰ってきたときに、アメリカと日本の研究スタイルの違いに悩むこともあったそうで、成功の裏にはやはり人知れず苦労があったのだなと感じました。
対談の中で、二人それぞれのこれまでの歩み、例えば進路や留学、研究生活についてたくさんのことを語っていますが、それぞれその世界に進むまでに紆余曲折があり、その中で今の分野に落ち着いたみたいですね。特に山中さんは、はじめ整形外科に進んだものの、自分のイメージと違ったので分野を変えることにしたと語っています。私もこの先の進路をどうしようか考えるものの決まっていないので、よく考えて後悔しない選択をしたいと思います。
研究者の立場から見た教育
またこの本の中で、自分の研究のことだけではなく教育についても語っています。例えば、国語の重要性や入試制度について話していますが、研究者という立場からみるとこうだ、というスタンスで書かれているなと感じました。
一つなるほどと思ったのが、益川さんが、科学遊びではなく基礎科学をもっと勉強しなさいと若者の発明クラブの人に言ったことです。これまで僕は一般の人にも科学に興味を持ってもらえるようにわかりやすく伝えるのが大切だと思っていてそれ自体は間違っていないと思います。そして興味を持ってもらうためにはやはり楽しくないといけないなとも思います。問題はその先で、例えば面白い実験をするとして、その現象がなぜ起こるのかまで考えないと科学が発展しないということを益川さんは伝えたいのだと私は思いました。特に、科学に興味を持った子供ならば、研究者になりたいと考える子もいるでしょうから、その子供たちに実験で起こっている現象の本質が何なのかまで考えてもらうのは未来につながるという意味で非常に価値のあることだと私も思います。
最後に
最後に、iPS細胞の今後の活躍は多くの人が期待するところだと思います。益川さん曰く、21世紀は生命科学の時代だということなので(ちなみに20世紀は物理学の時代だったそうです)、期待も高まります。iPS細胞について書かれた一般向けの本を読んでみるのも面白いかもしれないですね。