あいでんの読書日記📖

この本を読んでくれ!と紹介する。週1で更新したい。

「育休世代」のジレンマ

今日は社会問題についての本です。

概要紹介

世界規模での問題もあれば、日本の中での問題もたくあんある。

その中で、今回は女性の社会進出を題材にした本を紹介しよう。僕はまだ働いておらず、実感が湧きにくいなかでこの本を読んだが、そもそもこの本を読もうと思ったきっかけは、友人と話していてたまたまそういった話題になり、この問題について興味を持ったことだ。働いている人であれば実際にそういう状況を目にしている人もいるだろうから、この問題について考えたことがある人も多いのではないだろうか?

誤解を恐れずに言えば、子育てと仕事を両方満足いく形でこなしていくのは、ごく限られたエリート中のエリートを除いて無理な話ではないかと本を読む前は思っていた(そして、今もそう思う)。しかし、改善していく余地はいくらでもあるのではないか?では、女性が思うように働けない現状にいったいどんな問題があるのか、ということをこの本は詳しく分析している。

本の視点

ここで、この本の立ち位置について述べておくと、まず、著者の修士論文を一般向けに加筆修正したとある。分析方法は詳しいことは置いておくとして、量的調査ではなく、質的調査を行っている。15人ほどにインタビューをして各々の体験などから、その15人を様々なカテゴリーの中に分類し、その分類間の関係や差異などに注目して主張が展開されている。ここがポイントで、15人の女性は、本にもたびたび出てくる言葉を使うと、彼女らはいわゆる勝ち組である。優秀であり、就活も順調に進み、その上20代のうちに結婚、出産している(うらやましい限りである・・・)。ほかにもしっかりとした基準があったが(修士論文をもとにしているので)、本を読んでいてこの点が印象に残っている。その中で、出産後仕事を辞めた人、働いてはいるがこの先場合によってはやめるかもしれないと考えている人、仕事を継続していてやめる予定がない人、という大きく分けて3つのグループに分類して主張が展開されている。

加えておくと、著者自身も勝ち組に属している。それでも出産を経験してそれを通して、多くの苦労(苛立ち)に悩まされてきたということである。その悩みが修士論文執筆につながったようだ。

 

感想

女性の社会進出の問題は特に日本においては解決には程遠いのが現状である。この本を読み終えたころには、解決どころか問題が増えているようにすら思えてきた。それほどの問題をどうやったら解決まではいかなくとも、改善できるのか?この本でも、現実的な改善策はあまりみられない。問題の指摘はいくつも出されるのだが、それを改善するのはやはり相当な困難なようだ。

まず問題が何なのかを考えていくと、著者は、女性の社会進出を阻んでいる社会的な構造に問題があると指摘している。最もな意見であるが、この点は、あまり指摘されてこなかったらしい。なぜなら、社会構造が問題であるのに、その社会構造故に、女性が自主的に選択したように見えてしまうからだと主張している。つまり、見えないレールがあり、女性はそのレールに縛られて選択してきたということだろうと思う。

問題を解決するには、女性自身が声を上げることもあるが、政府と会社のトップが解決に向けて動く必要があると述べている。そうでなければ全体を見た時に解決したといえる状況にはならない。また、教育の制度にもこの問題につながる仕組みがあると指摘している。

会社は普通利益がなければやっていけないであろうから、女性の社会進出に力を注いでいけるのはそれだけの余裕がなければ難しいだろう。そんなことを言っていてはいつまでたっても解決しないかもしれないが、会社の経営者から見たら、女性雇用の問題はどれくらい重要なのだろう?気になる・・・

もしくは余裕がなくとも覚悟があれば改善するかもしれない。それにはトップが責任と覚悟をもって取り組まなければなるまい。うーむ、どうすればいいのか。

どっちにしろ、トップがその気にならなければいけないのは確かなことだろう。その気にさせることも大切かもしれないが・・・

また、女性の社会進出で考えることが男女平等のことであるが、勉強不足なため、男女平等の理想がどういうものか考えがまとまっていない。生物学的に考えて筋肉量だったり、物の考え方だったり、そして出産に関しては決定的に男女の役割があるわけで、平等って難しいなぁと思う。ただし、この本では優秀な女性に焦点を当てているので、優秀な人材を出産を通して失うのは社会的に見てもったいないと言っているのだと思う。もちろん優秀でない人はどうでもいいと言っているのではないのであしからず。

本書の一部を要約してみてみよう。

働きたい気持ちはあるのに仕事を振ってもらえないということについて、

会社側からすれば、子育てをしていて時間に制約がある人に対して、気遣うという点からも任せるのが怖いという点からも責任のある大変な仕事は割り振りにくいと思うだろう。

一方で働くお母さんからすると、子育てもあるが、仕事もしっかりして、成果を出していきたいと思うのに、仕事を任せてもらえない。周囲からの自分に対する見方が腫物を触るかのようで苦しいと思うこともあるそうだ。

 

現状を変えるのが難しいという話をしたが、それは自分たちだけ変わることへの恐怖があるからだろうと思う。その改革がうまくいかなければ下手するとつぶれてしまうかもしれないと考えると現状を変える気は起きにくいだろう。そこで政府が対策をとる必要があると思う。

最後に、まだまだ自分の中で考えがまとまっていないことを痛切に感じていることを述べて、筆をおくことにする。

 

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

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